大会主催講演1
2020年 9月6日(日) 9:00 ~ 10:30
Focusing Oriented Psychotherapy and Complex Trauma
講師
Rob Parker 氏 (フォーカシング指向心理療法家)
司会
宮田 周平
概要
Philosopher Eugene Gendlin studied our implicit understanding of the world, for example your ability to know implicitly what these words mean as you read them, without defining them explicitly in your mind.
In a series of research studies, he showed that psychotherapy clients who had the best outcomes were also more able to articulate their implicit understanding of themselves and their problems.
Because this ability to interact with implicit understanding, or felt meaning, so important for psychotherapy, Gendlin developed a teachable method for doing it, which he called Focusing.
In this workshop, we will Introduce a particular Focusing Oriented Therapy for Complex Trauma, by viewing and discussing a video of an actual therapy session.
哲学者としてのユージン・ジェンドリンは、世界を私たちが暗黙のうちに理解していることについて研究しました。
例として、皆さんがこれを読みながら、心の中で単語の意味を明示し定義しなくても、それが何を意味するのか分かる力を持っていることが挙げられるでしょう。
一連の調査研究のなかで、彼は次のようなことを示しました。
心理療法のクライエントで最も予後の良い人たちは、同時に、彼ら自身とその問題についての暗黙の理解をより明瞭に表現することも出来ていたのです。
この暗黙の理解(あるいは感じられた意味)と相互作用する力は、心理療法にとってとても重要なものでした。
そこでジェンドリンは、それを学ぶ方法を開発し、フォーカシングと名付けました。
このワークショップでは、特に複雑性トラウマのためのフォーカシング指向療法を紹介し、実際のセラピー場面のビデオを見ながら議論していきます。
講師紹介
Rob Parker
Rob Parker is a certified Focusing Trainer and Coordinator who studied philosophy with Gene Gendlin approximately every week from 2003 until Gene’s death in 2017.
In addition to publishing and lecturing on Gene’s philosophy, Rob has been teaching webinars on A Process Model and Experiencing and the Creation of Meaning since 2009.
In his other life as a psychologist specialized in psychological trauma, Rob has designed and directed inpatient and outpatient treatment programs, published and lectured for professional and governmental audiences, and appeared in national media such as the New York Times and MSNBC.
Rob is constantly amazed by the power of Gene’s philosophy and how it continually expands and deepens our awareness of ourselves and of the world.
ロブ・パーカーは認定フォーカシングトレーナーであり、コーディネーターです。
ジーン・ジェンドリンと共に、2003年から2017年に彼が亡くなるまでほぼ毎週哲学を学んでいました。
ジェンドリン哲学について出版や講演を行うだけではなく、「プロセスモデル」や「体験過程と意味の創造」について、2009年からオンライン上で教えています。
心理学者としての人生においては、心的外傷を専門としています。
入院患者及び外来患者を対象としたプログラムを企画し監督しています。
また専門家や政府関係者を対象に出版や講演を行い、ニューヨークタイムスやMSNBC(MicrosoftとNBCが共同で行っているウェブニュース)に出演しました。
ロブはジェンドリン哲学の持つ力に絶えず驚きを感じています。
それは私たち自身と世界についての気づきを拡大し、また深め続けているのです。
- 定員上限なし
大会主催講演2
2020年 9月6日(日) 10:40 ~ 12:10
認知行動療法と人間性心理学の交差
講師
原田 誠一 先生 (原田メンタルクリニック院長・東京認知行動療法研究所)
司会
伊藤 研一
概要
原田誠一先生のことは「精神療法」誌(金剛出版)によく登場されていたので存じ上げていたのですが、初めてお会いしたのは本講演で司会を務められる伊藤研一先生が主催する研究会でした。
二回目にお会いした研究会後の懇親会で、図々しくも本大会での講演をお願いしたところ、その場でご快諾いただきました。
司会の伊藤先生は原田先生について、「原田先生は“認知行動療法”といっても、バリカタ認知行動療法ではありません。
“受容、共感、一致”の大切さ、心理療法の奥深さに通暁しつつ、どうしたら実用的で応用可能なキーワードや技法を提供できるかに心を砕いている臨床家だと、私は考えています」と評しておられます。実際のところ、原田先生の二人の師匠は宮内勝先生(生活臨床)と神田橋條治先生(精神分析)であり、認知行動療法と直接関係のない精神科医とのことです。
本講演では,一見交わることがないと思われがちな認知行動療法と人間性心理学について,認知行動療法の立場から,両者が交差する点についてご検討いただきます。
(文責 榎本光邦(大会準備委員長))
講師紹介
原田誠一(はらだせいいち)
医学博士 精神保健指定医
履歴
1957年(昭和32年)、東京で生まれる
1983年(昭和58年)、東京大学医学部卒業
東京大学医学部附属病院精神神経科
東京都立中部総合精神保健福祉センター
東京都立墨東病院内科・救命救急センター
神経研究所附属晴和病院
東京逓信病院精神科・医長
三重大学医学部精神科・講師
国立精神・神経センター武蔵病院・外来部長
原田メンタルクリニック・東京認知行動療法研究所院長
所属学会
日本精神神経学会(精神療法部会委員)、日本認知療法学会(幹事)、東京認知行動療法アカデミー(理事)など
著作
正体不明の声:対処するための10のエッセンス.アルタ出版、2002年
統合失調症の治療-理解・治療・予防の新しい視点.金剛出版、2006年
強迫性障害治療ハンドブック.金剛出版、2006年
精神療法の工夫と楽しみ.金剛出版、2008年
強迫性障害のすべてがわかる本.講談社、2008年
うつ病治療.メディカルビュー社、2010年
適応障害.日本評論社、2011年
編集主幹
外来精神科診療シリーズ全10巻.中山書店、2015~2018年
翻訳
統合失調症の認知行動療法(キングドン著).日本評論社、2002年
症例から学ぶ統合失調症の認知行動療法(キングドン著).日本評論社、2007年
強迫性障害の認知行動療法(クラーク著).金剛出版、2019年
ほか共著、分担執筆、論文多数
- 定員上限なし
学会奨励賞受賞記念講演
2020年 9月6日(日) 13:40 ~ 14:40
臨床と有機体、主体、応答性
受賞者
久羽 康 先生 (駒澤大学)
司会
金子 周平
概要
奨励賞受賞の記念として講演をさせていただけることとなったので、「人間性心理学研究」に掲載をしていただいた論文のテーマを中心に、臨床とつなげるような形でお話をさせていただけたらと思っている。
テーマを「臨床と有機体、主体、応答性」としたが、私の中では、有機体的であるということ、主体であるということ、そして応答的であるということは互いに関連している。
つまり私の関心は、環境や出来事におのずと反応したり応答したりする生身の人間として、互いに対して向きあっているということが、臨床において重要なのではないかというところにある。
このように言葉にしてみるとこれは特に新しい主張ではないように思われる。
だが心理学では、人間の心は有機体をモデルとして理解されるよりもコンピューターをモデルとして理解されることの方が多いのではないだろうか。
コンピューターモデルの心は、インプットし、情報処理し、そしてアウトプットするものとしてイメージされる。
これに対して有機体は、反応することを通じて知覚する、あるいは知覚が分けがたく反応の一部であるという特徴を持つ。
心を有機体モデルで理解するということは、私たちの心が何かを理解することは本質的にある種の内的な反応性や応答性を通じてしか可能ではないのではないか、という主張を含んでいる。
ここで反応というのは、必ずしも感情を喚起されるというだけでなく、ある種の意味の感覚(Gendlinがフェルトセンスと呼んだようなもの)を抱くということも含む。
私の考えていることは私のオリジナルではなく、E. T. Gendlinや、あるいは精神分析家のW. R. Bionが述べているようなことを、私なりに素直にちゃんと理解しようとした結果だと私自身は考えている。
だが、GendlinやBionは理解するということが創造的な営みであることを論じた人たちである。
GendlinやBionの理論に対して、有機体としての私が、反応することを通じて理解したことをお話しできたらと思っている。
オンラインの向こう側にいる有機体の皆さんの内に、反応として何らかの意味の感覚や関心を少しでも刺激することができればと願っている。
受賞者紹介
久羽 康
平成12年に上智大学大学院文学研究科心理学専攻博士前期課程修了、平成30年に博士(心理学)学位を取得(上智大学、論文博士)。
石神井公園クリニック、横浜市スクールカウンセラー/相談指導学級、成城大学学生相談室、神奈川大学心理相談センター等に勤務。
平成31年より駒澤大学文学部心理学科専任講師。
臨床心理士、公認心理師、The International Focusing Institute認定フォーカシング・トレーナー。
主に心理療法のプロセスをGendlinの理論の観点から現象学的に考察する論考を書いている。
論文に『セラピーにおける空間』(心理臨床学研究26号)、『セラピーにおける他者性についての現象学的考察』(心理臨床学研究第31号)、『Congruence and incongruence as human atitudes』(Person-Centered & Experiential Psychotherapies 13)、『象徴化のプロセスとしての人間主体』(人間性心理学研究33号)、『主体-対象の可変的境界としての象徴化』(人間性心理学研究35号)、『心理療法における概念の用い方についての一考察』(臨床心理学20号)等。
- 定員上限なし
大会準備委員会企画シンポジウム
2020年 9月6日(日) 14:50 ~ 16:20
新型コロナウイルス状況下での人間性心理学の実践
シンポジスト
エンカウンターグループの立場から
三國 牧子 (九州産業大学)
フォーカシングの立場から
堀尾 直美 (フォーカシング・ネットワーク)
開業の立場から
下田 節夫 (幡ヶ谷カウンセリングルーム)
司会
榎本 光邦
概要
人間性心理学は実践的・臨床的活動を特徴として発展してきた。
その中でもエンカウンターグループやフォーカシング、さらにボディワーク等の身体技法のように体験が重視されている。
しかし、現在の新型コロナウイルス感染拡大の状況下で、体験を中心とした人間性心理学の実践が困難になっている。
実際に今年度企画されていたワークショップ等も中止や延期、変更を余儀なくされている。
そして、今回第39回大会も当初の予定を変更して、オンライン開催となった。
このような状況の中で人間性心理学の実践をどのように行っていくかは喫緊の課題と言える。
そこで、これまで人間性心理学の実践に関わってきた実践家をシンポジストとして迎え、新型コロナウイルス状況下での人間性心理学の実践について考えていきたい。
- 定員上限なし